血管内治療について

血管内治療について

当院では、頭蓋骨を切り開く「開頭手術」とともに、近年飛躍的に発展してきた体にメスを入れず血管の中から治療する「脳血管内治療」も積極的に行っています。
脳血管内治療は、「カテーテル」と呼ばれる直径0.5-3mmの細い管を患者さんの足の付け根や肘から血管に挿入した後、大動脈を経由して頚部や脳の血管に誘導し、薬剤や後述する「コイル」や「ステント」などを用いて治療を行います。皮膚や頭蓋骨を切らないため、身体への負担が少ないのが「脳血管内治療」の最大の利点です。

平成20年6月に、読売新聞の特集記事「体に負担の少ない脳血管内治療」で当院の治療実績も紹介されました。日本脳神経血管内治療学会では、脳神経血管内治療の進歩とその治療水準の向上をはかるため、認定専門医制度を導入しています。当院では脳動脈瘤、頸動脈狭窄、脳動静脈奇形、脳腫瘍、急性脳動脈閉塞および脳動脈狭窄などの疾患に対する脳血管内治療に積極的に取り組んでいます。血管内治療についてのご相談は外来でも対応しておりますので、気軽に声をお掛けください。

脳血管内治療の特色

脳血管内治療の利点
  1. 患者さんへ侵襲(負担)が少なく、高齢者や合併症をもった方にも施行可能
  2. 治療後の入院期間が短い
  3. 外見上の傷が残らない
脳血管内治療の問題点
  1. レントゲン透視下の手術なので、脳血管損傷などのトラブルが起きたとき、対応が遅れて後遺症を残すことがある
  2. 血管の屈曲蛇行が強い場合は治療困難な場合がある

脳血管内治療の対象疾患

脳血管内治療の対象となるのは以下のような疾患になります。
  • 頚動脈狭窄症
  • クモ膜下出血(破裂脳動脈瘤)
  • 未破裂脳動脈瘤
  • 頭蓋内脳血管狭窄
  • 脳動静脈奇形
  • 硬膜動静脈瘻
  • 脳腫瘍
脳血管内治療の治療実績
平成19年4月より平成20年12月末までの治療実績です。
分  類 件 数
頚動脈ステント留置術 74
脳動脈瘤塞栓術 40
脳血管拡張術 6
動静脈奇形塞栓術 7
脳腫瘍等、その他 7
合  計 134

主要疾患について

頚動脈狭窄
近年、食生活の欧米化、検査機器技術の向上により、脳梗塞の原因として頸動脈狭窄が非常に注目されています。脳梗塞によって症状が出現する場合だけでなく、一過性の症状(運動障害、言語障害、視野障害など)や症状がない場合でも、頚動脈が高度狭窄になっていて、将来的に脳梗塞を起こす危険性がある場合もあります。



高度頚動脈狭窄に対する治療法は、
  1. 血液をさらさらにする薬(抗血小板剤)による内科的治療
  2. メスを入れて血管を切開し病変を摘出する頸動脈内膜剥離術
    に加えて、最近では
  3. 頸動脈ステント留置術
が注目されています。ステント留置術は、血管造影検査と同様に、足の付け根からカテーテルを挿入して行うため、通常は全身麻酔も不要で手技時間も40分程で終了します。したがって高齢者、合併症のせいで全身麻酔が厳しい患者さん、などでも手技が可能ですし、入院期間も数日と短く済みます。わが国でも2008年4月から保険適応治療となったことから今後さらにステント治療の適応症例は増えるとみられています。


図1 ステント器具

図2 ステント留置術

手術前 ステント留置 手術後
図3 ステント留置術
破裂脳動脈瘤
くも膜下出血の原因の80%以上は、脳動脈瘤による破裂であり、発症すると約30%の方は死亡、治療がうまくいって助かっても重大な後遺症が残る方は約30~40%、社会復帰できる方は約30%とされています。一旦出血した脳動脈瘤は、再び出血しやすく、2度目の出血によって死亡したり、重い後遺症が残る可能性が高くなります。そこで、2度目の出血がおこる前に、早急に再出血を予防する治療(手術)が必要になります。
脳動脈瘤に対しての治療法は、開頭手術によって動脈瘤の根元を止めるクリッピング術とカテーテルで動脈瘤の中にコイルを詰めて血栓化させてしまう塞栓術の二通りがあります。脳動脈瘤塞栓術も通常の血管造影検査と同様に、まず足の付け根からカテーテルを頸部の動脈まで誘導し、その中に通した直径1mm以下のマイクロカテーテルを動脈瘤内に誘導します。そのマイクロカテーテルから形状記憶されたプラチナコイルを瘤の中に入れてゆき、動脈瘤が血栓化するまで手技を続けます。塞栓術は侵襲が少ないので、高齢者や重症クモ膜下出血など全身状態が不良な患者さんにでも施行可能ですし、外科手術の難しい場所でも治療が可能です。 現在当院では個々の症例に応じて、塞栓術、開頭術のどちらの治療法が安全に施行できるかを検討し、それぞれの治療法の長所、短所を含め、十分に説明した上で、治療法を選択しています。

クリッピング術 血管内コイル塞栓術
未破裂脳動脈瘤
わが国では脳ドックの普及も相まって、検査機器の性能の向上とともに、症状なしで未破裂脳動脈瘤が見つかる機会が増えています。そのため偶然見つかった脳動脈瘤を手術するべきなのか、そのままおいて経過をみてもいいのか、当院では詳しい説明を行っております。 クモ膜下出血の原因の80%は脳動脈瘤の破裂であり、現在でもその死亡率は30%前後に至り、医学の発達した現代でも治療困難な病気です。しかし脳動脈瘤破裂によるくも膜下出血の発症率は人口10万人に対して年間15から20人であり、また未破裂脳動脈瘤の破裂率は、年間1.0%程度と考えられています。ただし喫煙歴、高血圧、アルコールの多飲、クモ膜下出血の家族歴、多発例などを有する場合には破裂する危険性が高くなるといわれています。 以上のことをふまえ、私達は、無症候性未破裂脳動脈瘤の治療に際しては、個々の年齢、既往歴、家族歴、動脈瘤の大きさなどから破裂する危険度を客観的に評価し、根治治療を行う場合には開頭クリッピング術とコイル塞栓術、両者の長所、短所など、十分な説明を行った上で、最終的にご本人の希望に基づいて治療方法を選択しています。

■脳底動脈先端部 脳動脈瘤(9mm)
術前 術後
よくある質問
  1. 脳血管内治療をする場合、入院日数はどのくらいになりますか?
    動脈瘤に対するコイル塞栓術、頸動脈狭窄症に対するステント留置術ともに、大抵3-5日間です。(直達手術の場合、動脈瘤の開頭術では約一週間、頸動脈内膜剥離術の場合も10日間ほどの入院となります。)体の表面に傷もなく、退院してすぐにこれまでどおりの生活に戻れます。金属が体内に留置されますが、術後も生活の制限はありません。注)直達手術とは、普通イメージされる「メスで切る手術」のことです。通常メスを入れない血管内手術と対比的に使われる言葉です。
  2. 脳血管内治療にかかる費用はいくらくらいですか?
    頸動脈狭窄症に対するステント留置術では、だいたい個人負担で10-20万円程度、コイル塞栓術については、使用したコイルの数にもよりますので一概には言えませんが、高額医療の申請手続きを行うことにより、個人負担は20万円程度となります。ただし、病状、保険や収入により個人差がありますので、詳しくは病院管理課までお問い合わせ下さい。
  3. 脳血管治療で留置した金属はそのままにしておくのですか?
    ステントはナイチノール(合金)製、コイルはプラチナ製で、術後MRIも撮影でき、そのまま存在していても生体内には影響を及ぼさないと考えられています。
  4. 脳血管内治療は開頭術よりも簡単ですか?
    脳血管内治療は、体にメスを入れないという意味では開頭術より体の負担は少ない治療ですが、一種の手術であり治療自体が簡単というわけではありません。当院では訓練と経験を積み、日本脳神経血管内治療学会が認定した専門医師が治療を担当しています。術前には詳細な検討と手技についての説明を行いご了解を得た上で治療に当たっています。ただ、血管内治療を希望されている患者さんの場合でも、我々が開頭手術の方が安全と判断した場合は開頭術をすすめる場合もあります。大切なことは、2つの方法を使い分けより安全な治療を患者さんにしてあげることだ、と考えています。
  5. 5.脳血管内治療科は、紹介がないとみてもらえませんか?
    かかりつけの医師からの紹介状がありますとこれまでの経緯などがよく分かりますが、紹介状がなくてももちろん受診、相談可能です。