循環器内科

循環器(心臓血管)センターの紹介

当院、循環器(心臓血管)センターでは、心筋梗塞、狭心症、不整脈、心不全など、心臓疾患の診療および救急外来を行っています。診療には循環器専門医があたります。心臓の病気は、特に脳梗塞、脳出血などの脳血管障害との関連が多く、当院脳神経外科と連携をして患者様に満足していただける質の高い医療の提供を目指しています。
また、高血圧、高脂血症、糖尿病などの生活習慣病の治療や予防にも積極的に取り組んでいます。健診にて脳、心臓疾患の両面の予防も行っていますので御利用下さい。
入院診療では、心臓冠動脈造影や不整脈診断検査等を行っています。循環器外来は、月曜~土曜日まで毎日行っています。

心臓、血管の病気(循環器疾患)(Cardiovascular Disease)

心臓は、ほぼ胸の中央にあり、心臓の先端(心尖部)が左側に向いています。心臓は心筋という特殊な筋肉でできていて伸び縮み可能な4つの部屋(右心房、右心室、左心房、左心室)で構成されます。それぞれが電気の刺激によって収縮し、容積が減少して内腔の圧が上がり、弁(血液の逆流を防ぎ、順方向へ送り出す)が開き,血液を次の部屋、もしくは大動脈、肺動脈といった太い血管に送ります。肺に送られた血液は肺胞とよばれる場所で酸素化をされ、左側の心臓(左心房→左心室)に戻ります。大動脈に送られた血液は全身に流れていき、各臓器に酸素や栄養分を運びます。その後、血液は静脈を通って右側の心臓(右心房→右心室)に戻ってきます。このような循環を作るため、心臓の拍動は1日で約10万回です。そのため心臓自身も活動を行うために血液の供給を受けなければなりません。

1.虚血性心疾患(Ischemic Heart Disease)

狭心症(Angina Pectoris)心筋梗塞(Myocardial Infarction)
心臓自体は大動脈から最初にでている冠状動脈という細い血管によってその血液を心臓自身にも供給しています。この血管が動脈硬化によって血管が狭くなり、または閉塞することにより心筋への血液の供給が少なくなります。
血管が狭くなり、可逆性で心筋の壊死(えし=組織の一部が死んだ状態)にならないものを狭心症といい、完全に閉塞して壊死に至ったものは、心筋梗塞と言います。狭心症のなかでも胸部違和感や圧迫感といった症状の増悪傾向があり心筋梗塞に移行する可能性があるものを、不安定狭心症と呼んでいます。不安定狭心症、急性心筋梗塞、心臓突然死を併せて急性冠動脈症候群と呼んでいます。生命に危険が及ぶ状態なので、迅速で適切な治療が必要とされます。
狭心症、心筋梗塞の主症状
○痛みが出現する場所が胸とは限りません、心窩部(みぞおち)や背部痛、左肩や歯の痛みのことがあります。
○痛みを感じる範囲は内臓痛のため指でさせるような狭い範囲であることは可能性が低く、比較的広い範囲で感じるような痛みであることが多いです。よく表現される言葉として胸焼けや、重苦しい感じ、胸に物が載せられているような感じです。
○労作性狭心症では歩くと胸が苦しくなり、休むと良くなるような症状が認められます。
○痛みの回数が増えてきたり、持続時間が長くなってきたりしたときは要注意です。心筋梗塞の前段階である不安定狭心症の可能性があります。
○痛みが持続する際には心筋梗塞が疑われるため病院への受診がすすめられます。

急性冠動脈症候群(Aute Coronary Syndrome:ACS)
動脈硬化による血管の壁の老廃物をプラークといいます。このプラークが破れたりして壁表面に血栓がついて、血管の内腔を閉塞します。それにより心臓の細胞が壊れると心筋梗塞ですし、可逆的なものであれば、不安定狭心症と呼んでいます。動脈硬化性プラークの破綻に続き血栓が出現します。不安定狭心症、急性心筋梗塞、心臓突然死とつながる一連の病態をいいます。不安定狭心症や急性心筋梗塞の場合、狭くなり閉塞した血管を拡張する治療(経皮的冠動脈形成術とステント拡張)を迅速に行い、心臓の筋肉が壊死してしまうのを防ぐ必要があります。
虚血性心疾患(狭心症心筋梗塞)の検査
○心電図検査(12誘導心電図)(Electrocardiogram:ECG)
一般的な心電図検査(12誘導心電図)です。心臓の狭窄が高度で心筋に障害がでている場合や、胸痛発作などの症状があるときの心電図は異常を認めることが多くなりますが、症状なく安静時に行った心電図では、血管が狭くなっていても異常がないこともあり注意が必要です。この場合、診断にはホルター心電図や運動負荷心電図などの他の検査が必要となります。

○24時間ホルター心電図 (24Hr-Holter ECG)
携帯型心電記録装置で心電図変化を記録します。日常生活において胸痛などの症状と心電図変化が一致しているかなどを調べます。また不整脈の回数、種類も同時に見ることができます。心電図変化を認める場合はより詳しい検査が必要となります。

○運動負荷心電図(エルゴメーター検査)(Ergometer Exercise ECG)
運動負荷心電図は、運動、労作による狭心症の出現や誘発性を見る検査です。自転車運動の心電図変化や狭心症が誘発されれば診断が可能となることがあります。特に労作性狭心症など診断に有用な検査です。運動に伴う不整脈の出現を評価することもできます。(不整脈の項参照)

○冠動脈CT(Coronary Multislice CT)
当院では最新の64列マルチスライスCTという新しい3次元CT装置を用いて心臓を撮影し、その結果をコンピュータ処理し冠動脈部分の画像を再構築し狭窄部分を発見しています。約30分程度で検査は終了します。心電図異常があり、狭心症が疑われるときや、糖尿病や高脂血症があり心臓の血管が心配なときはこの検査が有用です。

○心エコー(Echocardiography)
超音波を心臓に当て、コンピューターで解析画像化して、心臓の形や動き、血流の状態を観察する検査が心エコーです。客観的な心機能評価が可能で、弁膜症の弁の動き、心筋梗塞で心臓の壁運動低下、先天性心疾患の血流観察などに威力を発揮します。苦痛や危険がないので、健康診断や病気が確定されていない段階でのスクリーニングにも適しています。

○冠動脈造影検査(Coronary Angiography)
手首、上腕もしくは鼠径部の血管からカテーテルを入れて心臓まで進めて造影検査を行います。これにより冠動脈狭窄の部位や程度を判定することができます。狭窄がある場合は、経皮的冠動脈形成術(PCI)や心臓バイパス手術など治療方針の決定ができます。
狭心症心筋梗塞の治療 経皮的冠動脈形成術(Percutaneous Coronary Intervention:PCI)
動脈硬化で狭窄あるいは閉塞している心臓の血管を、体外から挿入したカテーテルを使用して開大する治療法で、バルーン(風船)を用いて開大する方法、ステント(金属製のコイル)を血管内に植込む方法などがあります。最近では、再狭窄を予防する薬剤がステント表面にコーティーングされた薬剤溶出性ステントが登場しました。このステントの登場により再狭窄は以前より少なくなりました。この結果、従来冠動脈バイパス術の適応と考えられてきた難しい病変もステントによる治療が可能となってきています。
Ⅰ.冠動脈、脳血管、大動脈が撮影可能なアンギオ装置
Ⅱ.動脈硬化と急性冠動脈症候群
①内皮機能障害期
内皮細胞の機能障害が出現し,単球,白血球といった細胞が血管壁に侵入します。
②脂肪斑形成期
浸入した単球が貪食細胞に変化して酸化LDLを貪食します。
③進行したより複雑な動脈硬化巣
コレステロールを貪食した貪食細胞はやがて泡沫化し壊死を起こしてリピッド・コアを形成します。その血管内腔面に接する部分には線維性被膜を形成します。
急性冠動脈症候群
薄くなった線維性被膜が破れプラーク内部が血管内腔に直接接触し血栓が生じ、不安定狭心症、急性心筋梗塞へと移行します。
Ⅲ.虚血性心疾患における冠動脈病変の模式図
Ⅳ.経皮的冠動脈形成術とステント拡張の原理
Ⅴ.動脈硬化のバルーンおよびステントによる拡張


2.不整脈(Cardiac Arrhythmia)

脈の早くなる不整脈(頻脈性不整脈)では、動悸、息苦しいなどの症状が出現し、脈の数が遅くなる不整脈(徐脈性不整脈)では、めまい、失神などの症状がでます。子供から大人まで、若い一見健康そうな方でも不整脈は出現することがあります。不整脈を持った人の多くは無症状で、自分が不整脈を持っていることに気づいていないこともあります。会社で行われる健康診断や児童、生徒を対象とした学校健診で不整脈を指摘されて、その時初めて病院を受診することも少なくありません。
脳梗塞を起こしやすい心房細動という不整脈は、その治療をなるべく早期に行うことで、慢性化の予防や、脳梗塞の予防にもつながります。当院脳神経外科で、通院中の方も、この不整脈の方が多くいます。
不整脈の最近の治療は、原因部位を根治するカテーテルアブレーション(心筋焼灼術)治療、徐脈、心不全に対処するペースメーカー、突然死を起こす不整脈に対する植込み型除細動器(ICD)など、以前は薬でしか対処できなかった不整脈も治療できるようになってきています。
不整脈の検査
○心電図検査(12誘導心電図)(Electrocardiogram:ECG)
一般的な心電図検査(12誘導心電図)です。その検査中に不整脈が生じていなければ、不整脈の診断は困難となりますが、不整脈の出現しやすい心電図かどうかがある程度分かります。不整脈の発作中に記録できなければ、24時間ホルター心電図、心臓電気生理検査などの検査が必要となります。

○24時間ホルター心電図 (24Hr-Holter ECG)
携帯型心電記録装置で不整脈を記録します。日常生活においてどれだけ不整脈が出ているか、症状と不整脈が一致しているかなどを調べます。不整脈の回数、種類を詳細に調べることができます。

○運動負荷心電図(エルゴメーター検査)(Ergometer Exercise ECG)
運動負荷心電図は、運動、労作による不整脈の出現や誘発性を見る検査です。自転車運動の心電図変化や不整脈が誘発されれば診断が可能となることがあります。特に不整脈をもっていて、運動をする方や心臓疾患がある方が、運動により不整脈の危険性が増加しないか、狭心症などの病気が隠れていないかを判断することができる検査です。運動負荷試験の結果により、アスレチックジムやスポーツ競技会への参加の診断書が必要な場合は、それを作成することができます。


○心臓電気生理検査 (Electrophysiological Study:EPS)
心臓は微細な電気の刺激により動いており、心臓のなかには電気刺激を出す場所(洞結節)とその電気刺激が心臓全体に伝わるような電気の配線(刺激伝導系)が存在します。通常の心電図検査のみでは、不整脈の電気的な興奮を詳細に把握することは困難です。この検査では、不整脈を誘発して、心臓内での電気の流れを詳しく観察することで診断が可能となります。この検査結果をもとに治療方針の決定をします。
不整脈の非薬物治療
不整脈を薬物以外の方法で治療する方法です。薬を飲んだが効果が少ない、薬を飲みたくない、致死性の不整脈で薬だけでは突然死の危険があるかたが適応となります。
高周波カテーテルアブレーション(心筋焼灼術)(Catheter Ablation)
不整脈の発生源となっている心臓内の異常部位や伝導路を探し出し、細い管(カテーテル)の先端から高周波を出して不整脈を根治させる治療方法です。足の付け根や鎖骨の下、頸部の血管からカテーテルを挿入し、心臓まで送り込みます。心臓に電気刺激を送り、それが心臓内にどう伝わるかを詳細に調べることで、不整脈の原因と異常部位が分かります。この治療により不整脈発作がいつ起こるのかといった不安からも解放されることになります。不整脈の種類にもよりますが、3~5日間の入院が必要です。薬の効果が少ない、薬を飲んだが動悸発作が頻回で困っているなど、漫然と治療を続けていた不整脈に対してアブレーション治療を施すことで症状の改善につながります。
ペースメーカー(Pacemaker)
脈の遅くなる不整脈(徐脈性不整脈)に対して行われる治療です。ペースメーカーは大きく分けて電池と電気回路を組み合わせた本体(ジェネレータ)とこれに接続した細長い電極(リード線)で構成されています。電極の先を心臓内に固定し、本体と電極を接続すると、心拍数が低下したときだけペースメーカーから一定のリズムで心臓に電気刺激が伝わり、心臓が拍動するしくみになっています。胸部から鎖骨下静脈に沿ってリード線を挿入します。手術時間は1-2時間程度で終わり、約1週間ほどの入院ですみます。ペースメーカーの電池寿命7~10年で、使用しているペースメーカーの種類や設定、患者さんの心臓の状態によって変わります。
両心室ペースメーカー (Biventricular Pacing)
通常のペースメーカーは、脈が遅いなどの不整脈の患者に使われる装置ですが、両心室ペースメーカーは、心臓の収縮が左右ばらばらな患者向けに、左右の心室に電気信号を送り、左右の心臓の部屋を同期させることで心不全の症状を改善させることができます。心不全患者で中等度から重症例に使うことで、心不全症状が良くなることがあります。不整脈を合併する人も多いので最近では植込み型除細動器にこの機能を持ったものを植込むことが多くなってきています。
植込み型除細動器(Implantable Cardioverter Defibrillator:ICD)
突然死の原因となる不整脈(心室細動や心室頻拍)をお持ちの患者の皆様に対して行う心臓突然死予防のための治療法です。不整脈を体内で自動的に感知して、ペーシングの刺激で不整脈を停止させたり、電気ショックを加えて不整脈を止める治療がこの装置です。2~4時間程度で植込み手術が可能です。最近では、心臓の働きが悪く心不全を合併する患者様の場合は両心室ペーシング機能付きの植込み型除細動器を選択します。
不整脈の分類
●徐脈性不整脈(脈の遅くなる不整脈)(Bradycardia)
めまい、失神(意識消失)、息切れなどの症状がでる不整脈

○洞不全症候群(Sick Sinus Syndrome)
右心房の上部にある洞結節(発電所の役割)というところの異常によって、心臓の中で電気が作られなくなる病気です。洞結節からの電気供給の不足のため脈が遅くなるか、または時々心臓が止まるようになります。徐脈と同時に頻脈も出てくることがあります。頻脈が停止した時に心臓が止まりやすくなり、ふらつきや失神が起こります(徐脈頻脈症候群)。一般に数秒以上心臓が停止するとふらつきが起こり、意識がなくなることもあります。徐脈が原因で心拍出量が減少することで、一過性に脳血流が低下し、その結果、めまい、失神、痙攣を起こすものをAdams-Stokes発作と言います。この場合、ペースメーカー治療が必要となります。徐脈が長く続くと、心臓の機能が低下して心不全になることがあります。最近では、徐脈だけでなく心不全の治療としてペースメーカーが注目され、重症心不全の患者に両心室ペースメーカー植込みが行われています。

○房室ブロック (Atrio-Ventricular Block)
心房と心室の間には電気の流れを調節する役目をする房室結節という組織があり、心房と心室を電気的に接続、変電所の役割をしています。この房室結節機能が低下して、心房から心室の方へ電気が伝わらなくなるために脈が遅くなるのが房室ブロックという病気です。重症度によりI度、II度、III度に分けられます。心筋症のような心臓疾患に伴ってII度(Mobitz typeII)~III度の房室ブロックが起こった場合は、極端に脈が遅くなることがあります。脈が遅くなった時に、めまい、失神、心不全などが起こります。房室ブロックは、原因となる心臓疾患が隠れていることが多いので、心臓カテーテル検査や心臓電気生理検査などが必要となることがあります。重症度の高いII度(Mobitz type II)~III度の房室ブロックの場合、多くは永久ペースメーカーの植込み手術が必要となります。

II度房室ブロック

●頻脈性不整脈 (脈が早くなる不整脈)(Tachycardia)
動悸、息切れ、胸痛、失神(意識消失)などの症状がでる不整脈

○期外収縮(Premature Contraction, Ectopic Beats)
一般外来で最も多く認められる不整脈です。脈がとぶ、乱れると言った症状です。期外収縮とは、正常な電気的収縮命令が発生する洞結節以外の場所から電気的収縮命令が発生する不整脈で、異常な電気的命令が発生する場所によって、心房性(上室性)期外収縮と心室性期外収縮に分けられます。
心房性期外収縮は心房に、心室性期外収縮は心室に、異常な電気的命令が発生する場所があります。ほとんど人は自覚症状がなく、生活制限の必要もないため治療の対象になりません。しかし、期外収縮の数が多く、そのために心臓の動きが悪くなる人もいます。期外収縮は病気に関連して起こることもありますが、多くは病気とは関係なく、年齢や自律神経の変動でその頻度や症状の強さが変わります。しかし、心室性期外収縮の一部は心筋梗塞心筋症などが原因で起きている場合があり、そのため危険な不整脈に移行することがあります。心疾患が隠れていないか、また期外収縮から危険な不整脈に移行する可能性がないかを一度で調べてもらったほうが良いでしょう。治療は、症状がある場合は抗不整脈薬や安定剤を服用します。症状がない場合でも、不整脈の原因となる心疾患があって、しかも危険な不整脈に移行する可能性、心機能の低下例では、抗不整脈薬やカテーテルアブレーションによる治療が必要となることがあります。


期外収縮

○発作性上室性頻拍 (Paroxysmal Supraventricular Tachycardia:PSVT)
心臓の電気信号が複数の経路を伝わって、回っている状態です。突然速い動悸が始まり突然終わるのが特徴です。めまいや失神を起こすことがありますが、重症の心臓病などがなければ致死的とはなりません。発作性上室性頻拍には、その不整脈メカニズムには、WPW症候群、房室結節リエントリー性頻拍などがあります。いずれも、カテーテルアブレーション(心筋焼灼術)による治療法があります。

○房室結節リエントリー性頻拍(Atrioventricular Nodal Reentrant Tachycardia: AVNRT)
房室結節に2つの電気刺激伝導路(速伝導路、遅伝導路)がある場合には房室結節リエントリー性上室頻拍と呼ばれる不整脈が生じます。カテーテルアブレーション(心筋焼灼術)によって、2つのうち1つ(遅伝導路)を治療することで根治が可能です。

○WPW症候群(Wolf-Parkinson-White Syndrome)
発作性上室性頻拍を引き起こす不整脈疾患の一つです。WPW症候群では、心室が早期に興奮することでデルタ(Δ)波と呼ばれる特有の波形が心電図のP波の後に現われるのが特徴です。Kent束と呼ばれる副伝導路(バイパス)が存在し、この回路を回る電気の興奮が発作性上室性頻拍を引き起こします。また、WPW症候群は、心臓突然死の原因の一つと考えられており重要です。これは、心房細動などの頻拍性不整脈が発生すると、心室細動を引き起こすことがあります。このような例に対しては、カテーテルアブレーション(心筋焼灼術)による治療が必須となります。

○心房粗動(Atrial Flutter:AFL)
心房粗動では心房の中で一定の回路を通って規則的な電気の旋回が起こっています。症状は動悸やめまいなどが出現します。心電図上、F波と呼ばれる鋸状の規則正しい基線のゆれが300回/分程度で認められますが、心房の収縮は心室には一定の割合で伝わるため、心拍数はその割合により変化します。心房粗動を引き起こす心臓内の電気回路の一部を遮断することで頻拍を根治できます。カテーテルアブレーション(心筋焼灼術)により、頻拍のコントロールが可能です。

○心房頻拍(Atrial Tachycardia:AT)
心拍数が100回/分以上みとめられ、洞結節機能の低下に関連して心房の一ヶ所、もしくは複数ヶ所が興奮し頻拍の原因となったり、小さな範囲の電気回路を回るタイプのものがあります。症状は動悸やめまいなどが出現することが多くなります。頻拍が長く続くと心不全になることもあります。電気的な興奮部位をカテーテルアブレーション(心筋焼灼術)によって治療することで根治が可能です。

○心房細動(Atrial Fibrillation:AF)
脳梗塞の原因となる不整脈として知られ注意が必要です。有名なスポーツの監督など、この不整脈で脳梗塞に倒れた方は少なくありません。心房細動は心房全体が早く細かく動くことを意味します。心房細動に心房は1分間に300~500回ほど電気的に興奮し、細かく動きます。ただその電気信号が心室にすべて伝えられるのではなく、房室結節(変電所の部位)で適当な割合で心室に伝導します。そのため心房細動時には不規則に電気が心室に伝えられ、心臓は全体として1分間に60~200回の頻度で不規則に興奮します。一般に動悸がして息苦しくなり、胸痛などの症状がでます。心房細動は加齢とともに多くなる不整脈で、原因は心房筋肉の一種の老化現象ではないかとも考えられています。その一方で若い人にも出ることがあり、高血圧、肺疾患、甲状腺機能亢進症、弁膜症、心臓の手術後などで多くなります。治療は、薬剤で不整脈を抑制したり、脳梗塞の予防にワーファリン、アスピリンなどで血栓予防が必要となります。薬剤の他に、電気ショック(電気的除細動)、カテーテルアブレーション(心筋焼灼術)による不整脈起源を隔離する方法、ペースメーカーなどがあります。年齢、心臓疾患の有無、発作の頻度などでその人にあった治療を選択することになります。

●心臓突然死の原因となる不整脈

○心室頻拍 (Ventricular tachycardia:VT)
心室頻拍は、心室に発生した電気興奮が旋回することや心筋細胞の電気興奮の自動能が亢進することで発生します。心室の興奮頻度は120~250/分となる。心筋梗塞が基礎疾患として存在する場合には、頻拍によって心臓のポンプ作用が低下し、血圧の低下や心拍出量の減少が起こります。心室頻拍は30秒以上持続する持続性(sustained VT)と、30秒以内に自然に治まる非持続性(nonsustained VT)に分類される。心電図異常を認めるQT延長症候群という疾患では、発生する心室頻拍では、頻拍時の波形がねじれたような形を取るものをトルサード・ド・ポアー(Torsade de pointes)と言い、時に心室細動に移行する場合がある危険な不整脈です。薬で不整脈を抑制できない場合は、カテーテルアブレーション植込み型除細動器の適応となります。

○心室細動 (Ventricular Fibrillation:VF)
心室細動は心臓突然死の原因となる不整脈で、電気の小さな渦巻きが無秩序に心室全体を興奮させるため、心臓は収縮しなくなり、血圧が急激に低下します。3~5分以内に電気的除細動による治療をしないと致命的となります。一般的に、狭心症心筋梗塞などの虚血性心疾患、心筋症などの心臓病があれば心室細動の出現リスクは高くなります。しかし、明らかな心臓病がなくても心室細動が突然出現することがあるので予防は非常に難しくなることがあります。この心室細動の治療は電気的除細動をして一刻も早く脈を正常に戻す必要があります。薬で発作を抑制できない人や再発が予想される人には、不整脈を体内で自動的に感知して電気ショックを行う植込み型除細動器(ICD)の治療が必要となります。しかしながら、心室細動は初発の人がほとんどなので、病院到着までにいかに救命するかが重要となります。最近では、救急車だけでなく、スポーツ施設、人の多く集まる公共施設、空港などには自動体外式除細動器(AED)という機械が設置され、医師以外の人でも早期の電気ショックによる治療が可能となり救命率が向上してきています。(一般の人が唯一できる医療行為です。)
心臓突然死の原因となる心室細動(左)と自動体外式除細動器(AED)(右)



3.心不全(Heart Failure)

息切れ、動悸、呼吸困難、咳が主症状で、原因は心臓ポンプ機能の低下です。右心室の機能が低下すると、静脈系のうっ血が起こり、左心室が低下すると、全身に血液が流れず、全身の臓器への影響がでます。急性の場合は、酸素吸入を実施し、薬物投与等でうっ血を改善する処置をとります。慢性の場合は、基礎心疾患の治療を行い、水、塩分の制限、利尿剤等薬剤の投与を行います。
最近では両心室ペースメーカー不整脈の項を参照)を使った慢性心不全治療が行われます。また、外来での血液検査(BNP:ナトリウム利尿ペプチド)により、心不全の程度を簡便に評価することができるようになってきています。

4.心臓弁膜症(Valvular Heart Disease)

心臓弁膜症は、血液の流れを調整する心臓の弁の開閉や組織に障害が起きる病気です。心臓弁の開口部が狭くなると、心臓が送り出す血流量は減ります。またそのことにより、いくつかの障害が生じます。例えば、左房が収縮するときに僧帽弁が狭くなっていると、左室を満たす血流が少なくなります。これは全身に送る血液の量が少なくなるということです。心臓弁がぴったりと完全に閉じない場合、血液が逆流します。この心臓弁の状態は全身に必要な血液量を送る心臓の能力を弱めます。
例えば、左室が収縮するときに僧帽弁が完全に閉まらない場合、血液は大動脈へ送られる代わりに、左心房に戻ります。逆流した血液や心房に押し戻された血液は、肺だけでなく心房にも圧力を生じます。心臓のポンプ機能低下、心不全症状が出る場合、心房細動など不整脈を合併する場合は、薬物治療や外科的手術が必要となります。

5.特発性心筋症(Idiopathic Cardiomyopathy)

息切れ、動悸、息切れ、呼吸困難が主症状で特発性心筋症は、心臓の心筋に障害が起きる病気です。心臓が拡張する拡張型心筋症(Dilated Cardiomyopathy)と心臓の壁が厚くなる肥大型心筋症(Hypertrophic Cardiomyopathy)があります。心不全症状が強くなる前に治療を早期に始めることが大切である。薬剤で症状が軽快することもあるが、不整脈の合併には植込み型除細動器や心機能低下例には両心室ペースメーカー治療を必要とし、心臓移植手術の適応となる場合があります。

6.急性大動脈解離(Acute Aortic Dissection)

背部、胸、腰等に激痛を認め、発汗などが主症状です。ショック状態、失神で運ばれることもあります。急性大動脈解離は、弱った血管内側の膜が血圧等で裂ける(解離)病気です。進行により解離部分が大きくなると、破裂して生命の危険が生じショック状態・意識不明となることもあります。動脈硬化等で血管が弱くなるのが原因で、まず血圧降下剤の投与などで血管の外側の壁が破裂すること防ぐことが重要です。効果のない場合や、心臓、脳などに影響のある場合は緊急の手術が必要となります。脳梗塞、心機能障害、呼吸器合併症、腎機能障害等、また膠原病等の全身性疾患の合併が多く、治療法の選択が重要となります。

7.腹部大動脈瘤(Abdominal Aortic Aneurysm)

ほとんどが無症状で、他の病気のために腹部の検査をした時、偶然発見される場合が多く、症状がある場合は腹部、腰部の痛みで見つかることもあります。動脈硬化が原因となる場合が多く、瘤の径が5センチ以上になると破裂して生命の危険があるので、切除手術が必要となります。

8.閉塞性動脈硬化症(Arteriosclerosis Obliterans:ASO)

腹部大動脈および下肢動脈の動脈硬化のために血液の流れが悪くなり、慢性の血流障害を起こした病態をいいます。動脈硬化が進行すると、特に足では、動脈の閉塞により足の動脈が狭くなったり、閉塞して、足がいつも冷たかったり、しびれたり、間歇跛行(かんけつはこう)といって歩くと下腿の筋肉が痛くなるなどの症状がでてきます。閉塞性動脈硬化症は、全身に進行した動脈硬化のひとつであり、他の血管でも動脈硬化が進行している疑いがあります。狭心症心筋梗塞などの虚血性心疾患や脳梗塞などの脳血管障害を合併することもあります。

9.肺塞栓(Pulmonary Embolism)

急に呼吸困難、胸の不快感、咳などの症状がでます。肺塞栓症は肺動脈に血栓が詰まって、肺に血液が送られなくなる症状です。肺への血液の流れが完全停止し、肺組織が壊死した症状で、肺動脈に血栓が詰まって、心臓から肺への血液の流れに障害が起こるのが原因です。血行障害の原因となる血栓は、ほとんどが下肢の深部静脈でできます。航空機搭乗後のエコノミー症候群として有名ですが、外科手術後の臥床で院内発症することも多いので予防が重要です。弾性ストッキングなどの予防、深部静脈血栓がある場合はヘパリン、ワーファリンなどで抗凝固療法を行います。血栓が肺に飛ばないように下大静脈フィルターを使い肺塞栓の予防を行うこともあります。

10.生活習慣病(Lifestyle-related Diseases)

生活習慣病は、心筋梗塞や脳梗塞の危険因子となります。危険因子は高血圧高脂血症糖尿病、加齢、家族歴、喫煙、ストレスの7種類です。こうした危険因子の保有数に比例して、発症率が高まります。生活習慣による影響を強く受ける因子であり、逆に言えば、生活習慣の見直しで改善可能な因子です。
高血圧(Hypertension)
一般に最高血圧(収縮期血圧)が140mmHg以上、最低血圧(拡張期血圧)が90mmHg以上を高血圧と呼びます。このうち原因の特定できないものを本態性高血圧症と言います。腎臓病やホルモン異常など、原因となる病気があるものを二次性高血圧といいます。
一般にストレスや塩分のとり過ぎ、タバコ、酒、運動不足等が要因となります。日本人の高血圧症のうち、90%以上が、この本態性高血圧症です。自覚症状がほとんどないため、健康診断等で、見つかる場合が多く、放置すると合併症が起き、狭心症心筋梗塞や脳卒中、腎障害等を発症します。日常生活で運動や食事の節制等を行い、効果が少ない場合は薬物による対症療法を行います。降圧剤は種類が多く、他の疾患との関係で選択されることが多くなっています。
高脂血症(Hyperlipidemia)
血液中の脂肪(コレステロールや中性脂肪)が正常値を超え、からだに悪影響を招く状態を高脂血症といいます。また、善玉コレステロールと呼ばれるHDLコレステロールは低値を示し、これも動脈硬化の危険因子となります。高脂血症は自覚症状がないため、日常生活に支障をきたすことはありませんが、そのままの状態で放置しておくと、血管壁に脂肪が沈着して動脈硬化を引き起こす原因になります。
動脈硬化が進行し、心筋梗塞、脳梗塞などの病気の引き金になりかねません。血液検査では、血液中のコレステロールと中性脂肪、HDLコレステロールなどの数値を調べます。異常がある場合は、高脂血症の程度によって、食事、生活習慣の改善指導や薬物治療を行います。
糖尿病(Diabetes Mellitus:DM)
糖尿病は、血液中のブドウ糖が過多になり、心臓、脳、血管や神経、腎臓、目など全身の様々な組織や機能に障害を与える病気です。糖尿病は単に高血糖の病気と捉えるのは要注意です。症状としてのどの渇き、水をよく飲む、尿量が多い、夜中何度もトイレに行く、疲れやすいなどです。
早期に適切な治療をしなければ合併症を引き起こし、心筋梗塞、脳梗塞、閉塞性動脈硬化、腎不全、網膜症などを招き、最悪の場合、命をおとすこともあります。つまり糖尿病は進行させないことが大切です。早期発見、早期治療で合併症を防ぐことにつながります。外来にて血糖値、HbA1cなどの血液検査を行い、程度に応じて、食事療法、運動療法、薬物療法を組み合わせて治療を行います。