医療法人社団 北原脳神経外科病院

理事長 北原 茂実

こんにちは、北原茂実です。

今、日本に元気を取り戻す方法、地域の勢いを盛り上げる方法をみんなが模索しています。もう、落ち込んだ現状を嘆くだけ、文句を言うだけの時期は過ぎました。今からは、だからどうするんだということを、市民自身が考え実行するときです。

ところで、日本全体を覆うこの閉塞状況はすべて不景気が原因でしょうか?お金がないからものを買わない、ものが売れないからお金が入ってこない、そんな悪循環だけが人々から笑顔を奪った元凶なのでしょうか?

私は、本当の原因は老いと病への不安だと思うのです。

お金がないために、貧しくみじめな老後をおくるのではないか、病院にもかかれず苦しいだけの日々が来るかもしれない、そんな不安が未来への希望を摘み取っているのではないでしょうか?

思えば、私の子供時代(3丁目の夕日の頃です)、日本は今よりずっと貧しかったけれど、子供はたくさん生まれていたし、老人も役割を持ってしっかり地域に貢献していた。ちょうど今の新成長国のように。お金はなくても希望があれば、人心も経済もちゃんと活性化するのです。

このような思いは最近の政治家の意識にも上っているのでしょう。「介護・医療を成長産業と捕らえ、これに人やお金をつぎ込むことによって雇用を生み出し、老いと病の不安を取り除くことで日本に元気を取り戻そう」という選挙公約が目を引くようになりました。

でも、ちょっと待ってください。国や自治体がいたずらに既存の施設やシステムに人やお金を投入したところで、それは公務員を倍にするようなもの。税金を消費するだけで利益や商品を生み出していくものではありません。

そこで、私は以下の八王子活性化計画を提唱したいと思うのです。


1)市民による農場の経営 −医療や介護・療養と生産の両立をはかろう−

「退職後、晴耕雨読の農業生活がしたい」そんな第2の人生を夢見る団塊の世代の方も多いことでしょう。その際、問題となるのが田舎に移住するリスク。ご家族の反対も予想されます。

ところが、この八王子は都心へのアクセスと、生産緑地・休耕田などの農業素地の両方がそろった稀有な都市です。そこにプラスして多くの病院、療養施設、リハビリ介護施設を擁した理想的な都市型農業生活空間なのです。遠くに行かなくても欲しい環境は自分たちで作り出せます。市民が力と知恵を出し合えば、介護と通勤・仕事と療養を両立させることは可能なのです。

例えば、所有者が高齢化し後継者のいない農地を借り受け、市民農場を作りましょう。最初は小規模でも収益を上げる経営体質が確立できれば、牧場を作ることも夢ではありません。野菜・果実・生花・酪農・米・麦などの生産から、乳製品・パン・麺・菓子などの加工品作りまで。安全・新鮮・高品質な商品を供給し、多くの雇用とお金を地域にもたらすことができるでしょう。

雇用の中身は必ずしも賃金型正社員とは限らず、リハビリ目的の元患者さんや就労支援中の障がい者、ひきこもりがちな若者、要介護者を抱えたご家族、学生さんや市民ボランティアなど多様な人々を集めましょう。医療施設やデイケアセンターなどが人材供給のネットワークを立ち上げ、医療の専門家をアウトドアにも適正配置できれば、生活に根ざした真のリハビリテーションが行えるはずです。

安全な食料と安心な医療・介護という、二つの“いい物”をくっつける試みは、市民の地域経営感覚を応援し、死ぬまでお互いに役割をまっとうするという本来の共同生活を思い出させてくれることでしょう。


2)地域通貨“はびるす”の普及 −お金がなくても困らない老後を作ろう−

当病院グループでは10年以上前から、家族ボランティアシステムというものを立ち上げ、病院内で患者家族に働いてもらう代わりに室料差額などを免除・割引する制度を実施しています。また、普通の市民ボランティアの方には報酬代わりに“はびるす”というポイントがもらえる制度があり、“つどいの場(託児所・託老所)”の利用や脳ドックの利用に使われています。

こうした、「元気なときや時間に余裕のあるときに人の療養介護の手助けをして、自分や家族にそれが必要になれば助けてもらう権利をポイント貯金する。また、他のサービスや商品に替えることもできる」という仕組みを広く地域で利用するのはいかがでしょうか?

「高齢になり自分も要介護だ。あるいは配偶者が要介護でとても人様の世話などする余裕はない」という方は、例えば自宅の一部をミニデイケアセンターとして提供していただくのはどうでしょう?隣の家の方にも駐車場を提供してもらうことでポイントが付くようにすれば、限られた税金を有効に利用できるのではないでしょうか?

少子高齢化時代は、決して暗黒の時代ではありません。世界中で誰も経験していない未知の世界なんだから、日本人の知恵と勇気で光あふれる活力の時代にすることだってできるかも知れません。そうしたら、その制度そのものを諸外国に輸出しましょう。八王子に世界中の市民リーダーが見学ツアーに来ないとも限りませんよ(笑)。


3)就労支援システムで企業活力をつける −“お互い様”をシステムに昇格させよう−

生まれてくる子供の6%は何らかの障がいをかかえている、という事実をご存知ですか?これまで日本は患者の命を救うことには法律も世間も厳しすぎるくらいの規範を医療従事者に与えてきましたが、助かった子供たちの将来まできちんと見守ることをしてきたでしょうか?また、人生のどの時点においても、誰の人生においても起こりうる障がい者になるリスクを個人の問題としてのみとらえ、税金を使えばそれで良しとしてきたのではないでしょうか?

障がい児を授かれば、それで親の人生は終わるかのような日本の冷たさが今日の少子化を招く一因であったことは否めません。また、働き盛りの人が脳卒中になったとき、職場復帰への支援が国や自治体の体制として十分になされてこなかったのは周知の事実です。

さらに、これからは国のお金も底をついた上に障がいを持つ人の数は増えていくという悲惨な世の中、人々の表情が暗くなるのは無理もありません。

でも、打つ手はちゃんとあります。当法人の作業療法士は“あしたば”という就労支援システムを独自に築いてきました。主に脳卒中後遺症を持つ中年患者さんを対象として、退院後のリハビリと職業訓練を実施し、グループによる精神的支援、企業・行政との橋渡しをするシステムで、多くの方が社会人として再び自立を勝ち取ってきました。

「日本でいちばん大切にしたい会社」という本の中に出ていた、「幸福とは、(1)人に愛されること、(2)人にほめられること、(3)人の役に立つこと、(4)人に必要とされることであり、(2)、(3)、(4)は働くことを通じて実現できる幸せである」という言葉に私も深く共感します。

これを地域で、市民ぐるみ企業ぐるみで実践していきませんか?これからの世の中、自分あるいは家族が“人様の世話にはならない”などと断言できる人などいないでしょう。日本には昔から“困ったときはお互い様”といういい言葉があります。施しや一方的な支援では本当の幸せは得られません。その人にあった働き方をみんなで考え、支えあって経済的自立の道を開いていきましょう。そんな街なら、これから子供を生み育てる若い世代も「ぜひ八王子に住みたい」と思ってくれるはずです。


以上、今回は3つほど提案させていただきました。

本当はもっともっと語りたいアイディアがあるのですが、これから具体的な形になるに従い公表していきたいと考えています。

私が最終的に目指したいのは。「医療を中心とした街づくり」です。この中には先進医療技術を世界に売り出したいという夢も入っています。八王子市民の方はもちろん、興味を持たれた方はどなたでもご意見をお寄せください。

消費人口が縮小し、新成長国がその成長エネルギーをぶつけてくる中、今までのようにただ物を安く作って売るだけでは日本は沈没してしまいます。これからは蓄えた知恵と工夫・技術・制度を世界に売らなくてはなりません。八王子をそのビジネスモデルにしていこうではありませんか!