活動報告

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2017/7:第20回 日本臨床脳神経外科学会(広島国際会議場)


氏名妹尾一郎(看護部)
テーマリハビリ病院における身体抑制終了に向けての取り組み  〜当院独自の抑制OFF評価シートの実践と効果検証〜
備考【はじめに】
転倒転落は、患者のADLを低下させ寝たきりになる直接の原因としても重視されており、機能回復・ADL再獲得を使命としている回復期リハビリテーション病院では、いかにして転倒転落事故を防ぐかということが重要になってる。
当院で行なった2014年の研究において、抑制具使用経験者の転倒転落事故が58%にのぼるという結果となった。
更に、抑制具を除去した直後に骨折を伴う重大な転倒事故が起こったこともあり、抑制具使用継続・終了の判断基準・評価の重要性を痛感することとなった。
その事故を契機に、2015年より抑制OFF評価シートを考案・実践した結果、抑制具使用経験患者の転倒事故の減少および抑制具使用期間の短縮という効果が得られたためここに報告する。

【方法】
抑制OFF評価シート導入前後各1年間の、抑制OFF評価を行った入院患者の抑制具使用期間と、転倒転落状況を看護記録および院内I・Aレポートから抽出し後方視的に調査した。
尚、本研究における抑制具は、直接身体を抑制する体幹抑制・車椅子抑制の2種類としている。
抑制OFF評価シートとは、当院のリスクマネージメント委員会が作成した抑制具を安全に除去していくための評価ツールである。
特徴としては、まず抑制具を使用しながらの評価①を行います。その後抑制具のセッティングだけ行ない、センサーを使用して評価②を行っていく点である。患者が起き上がった際にはセンサーが反応するためスタッフが直ぐに対応することができる。
評価②に移行する際は家族に現在の患者の状況を説明し、情報共有を行ってから実施する。
OFF評価期間は最低①は3日、②は日勤帯3日、夜勤帯3日の計9日。この3日という数字の根拠は、当院の転倒状況および他の先行研究においても入院してから1週間、さらにそのうち最初の3日間に高確率で転倒が起きているという現状を鑑みて決定した。
評価項目は転倒要因となりうる薬剤(眠剤・降圧剤・利尿剤など)の変更状況や不穏状況・過信言動の有無などを○×方式でチェックして、誰が見ても一目瞭然で患者の転倒転落のリスクをわかるようにしている。
×がついた時点で評価を一旦中止し担当者間で継続・終了の検討をおこなっていく。

【結果】
抑制OFF評価そのものは、評価シート導入前から、個人の判断、もしくは担当者間で相談という形で行なわれてた。2014年の対象者は16名、2016年の対象者は33名であった。
これらを比較すると評価シート導入前後で評価平均日数に関しては約半分に短縮されている。
また、評価シート導入前は評価に要した日数のばらつきも顕著であった。
評価シート導入後は評価中の転倒および抑制終了後の転倒もゼロという結果であった。
患者の身体状況に関しては、2016年のOFF評価者が極めてよいというわけではなく、JCS・麻痺の有無ともに概ね同じような傾向にあった。

【考察】        
患者の生命を預かっている以上、転倒転落は絶対に避けなければならない。一方で、回復期リハビリテーション病院としての使命をはたすためには、患者のADLを向上させていかなければならない。患者の動きを引き出しADLを向上させていくことと患者の行動を制限することは、ある意味では相反するものであり現場のスタッフは日々この狭間で悩んでいる。抑制具を終了するか否かという判断は言い換えると安全を担保できるかどうかということである。
OFF評価シート導入前の状況は、安全を担保するものが無い中で、その判断の重さ故に抑制具の使用期間延長に繋がってしまっていたと考えられる。
一方で、一刻も早く患者の苦痛を取り払いたいという看護師としての当然の思いや、「きっと大丈夫だろう」という希望的観測のもと、大丈夫そうな側面だけをみて患者を深く見ることが出来ず、自己の主観的判断で抑制具を終了し、それが結果として転倒につながってしまっていたと考えられる。

抑制OFF評価シートは、主観的判断ではなく客観的事実によって誰が見ても同じように評価できるツールである。患者の状況が「危険なことはしないと思う」という主観ではなく「危険なことが起きていない状態である」という客観的事実をスタッフが確認できると同時に、その客観的事実こそが適切な判断材料となり安全かつ早期の抑制終了に繋がったと考えられる。また、患者のささいな過信言動や薬剤などの影響要因・精神状況など細かいところまで評価をしたことが転倒数減少に繋がったと考えられる。このことから、OFF評価シートでの観察項目が効果的であったと考えられる。更に、抑制を早期に終了することにより不必要なストレスを与えず、抑制具を無理やり外そうとするなどの転倒危険行動に繋がらなかった結果、転倒者数の減少に結びついた側面もあると考えられる。
【結論〜今後の展望〜】
今回、抑制OFF評価シートによって抑制期間の短縮と抑制具使用者の転倒の減少という結果を得ることが出来た。
抑制具は転倒予防に一定の有効性はあるが、ストレスを増強させることや、患者の筋力低下を招く因子となるという事がいわれている。
今後は抑制具使用期間減少のみならず、抑制具そのものを使用せず、患者の機能回復・ADL向上と安全面を確保するという新たな環境づくりを当院は目指していく。
【参考文献】
・寺西利生 他:回復期リハビリテーション病棟における転倒の分析—転倒事例の動作管理方法による決定木分類を用いた検討—
Japanese Journal of Comprehensive Rehabilitation Science vol.4 (2013)
・二井俊行 他:回復期リハビリテーション病棟における脳卒中片麻痺患者の転倒要因 愛知県理学療法士会誌 第18巻第3号 94−97 2006
・佐藤鈴子他 身体拘束による高齢男性の心理的ストレスと芳香剤のストレス軽減効果の検討 国立看護大学校研究紀要 第4巻 
           第1号 37-42  2005